S-6-1 アジア各国・地域を対象とした低炭素社会実現のためのシナリオ開発

本研究の目的は、戦略研究プロジェクトの全体テーマとして示されているアジアの低炭素社会に向けた 中長期的政策オプションを立案・予測・評価する手法を開発するために、 1990年より開発してきたアジア統合評価モデル(Asia-Pacific Integrated Model: AIM)を用い、 低炭素社会の実現に必要となる要素(社会経済の動向や対策)について定量的かつ定性的に分析するとともに、 アジアの低炭素社会に向けた道筋をバックキャスティング手法を用い、社会実装に向けた具体的なシミュレーション分析を行うことである。

定量化にあたっては、各国のみを対象とするのではなく、各国間の関係も視野に入れた分析を行うために、 世界モデル、国モデル、地域モデルなど、多岐にわたるモデルを用いて分析を行う。 また、再生型エネルギー開発と温暖化抑制以外の地球規模諸問題との係わりなど (例えば、バイオマスエネルギー開発・食糧問題・土地利用変化)、低炭素社会を検討する際に問題となる諸制約条件についても定量的に解析し、 アジアにおける低炭素社会の実現に向けた統合シナリオを開発する。特にエネルギーシステム・政策に関しては、 これまでのエネルギー開発の経緯や世界全体のエネルギー需給状況、各国・地域のエネルギー安全保障など、 低炭素社会以外の要素をも十分考慮して定量的に検討する。また、中国、インドなどアジアの主要国を対象に、各国・地域の研究機関、 研究者と協力して、各種モデルを適用し、国・地域レベルの低炭素社会シナリオを構築する。

本研究はS-6プロジェクトのプラットフォームとして、プロジェクト全体の進行を調整するとともに、 それらによる知見を総合して、政策支援と普及啓発に資するアジア低炭素社会像を描く。

チームリーダー

増井 利彦 (ますい としひこ)
(独)国立環境研究所 社会環境システム研究領域 統合評価研究室 室長

1970年生まれ。大阪府出身。専門は環境システム。大阪大学大学院工学研究科で学位を取得し、 国立環境研究所で地球温暖化研究に携わるようになって10年以上になる。 国立環境研究所では、温暖化問題や廃棄物研究など様々な環境問題を、社会・経済の諸活動の中でとらえ、 環境問題を解決するための対策や政策を検討する統合評価モデルの開発に取り組んでいる。 また、構築した統合評価モデルを用いて、環境、経済、社会を対象とする将来シナリオの作成にも携わっている。 2000年からは東京工業大学大学院社会工学専攻との連携教員として、週に一度は講義や論文指導も行っている